大字五里霧ノ中

存在の証跡 — 噂の終わる夜

概要

 『存在の証跡 — 噂の終わる夜』(そんざいのしょうせき — うわさのおわるよる | A Trace of Existence — The Night the Rumor Ended)は、『Urban Legends: Angels in the City.』に属する都市伝説群の一篇であり、同シリーズにおける「都市伝説としての天使譚」が転機を迎える出来事として語られる物語である。天使の姿を直接見ることができない兄妹が、幼少時から蒐集してきた天使に関わる文献・口承の中に、天使が存在した痕跡が残り得るという可能性を見いだし、その証跡の把握を試みる過程を扱う。
 本作は、天使の実在を断言するのではなく、あくまで「天使が存在したことを示し得る痕跡」を巡る物語として構成される点に特徴がある。また、主人公が周囲の理解を得られず孤立していく一方、唯一の理解者である妹がその営みを支え、やがて継承するという構図が、物語の主軸として描かれる。物語の結末では、兄妹の営みが「噂」を終わらせ、都市と天使の関係が次の段階へ移行したと位置づけられる。

基盤楽曲

あらすじ

 主人公と彼の妹は、天使の姿を直接見ることはできないが、幼少時より都市に伝わる天使に関わる都市伝説を好み親しみ、その文献や口承を集めていた。2人は、天使の話は都市伝説だとは理解しつつ、実在することを夢見ていた。
 主人公はこれらの都市伝説を読み解いていく中で、天使が実在することを証明できる可能性を見いだした。それは、何らかの方法で「天使がいたという痕跡」(「残響因子」)を掴むこと。主人公は残響因子を捉えるための機械を作り続け、天使がいた証拠を掴もうとした。
 しかし、その行動は周囲から奇異な目で見られ、主人公の周囲からは人々が離れていき孤独となった。当初は学会等で発表を行おうとしたが取り合われず、主人公は人々との接触を避け、黙々と機械の製作と試行を重ねるようになる。孤独になった経験から、都市伝説の中に登場する天使の存在を証明することで「人は決して独りではない」ことを示す、という思いも主人公の内なる目的となっていった。
 妹は唯一の理解者として主人公の営みを支え、文献の整理や記録の取りまとめを続けた。機械の精度が少しずつ上がっていく中、無理がたたり主人公は若くして死亡する1)。妹は主人公の意思を引き継ぎ、残された数々のメモをもとに機械を完成させた。
 完成した機械は、他者が検証可能となる形で残響因子――天使の存在した痕跡――を捉えることができるものであった。これにより天使の話は「噂」としてのあり方を終え、都市と天使の物語は次の段階へ移行したと語られる。

登場人物

主人公

 天使の存在を直接見ることができない人間。幼少時より妹と共に都市伝説を蒐集してきたが、文献や口承を読み解く中で、天使が存在した痕跡を捉える可能性を見いだす。痕跡を「残響因子」と名づけ、これを捉えるための機械の製作と試行に没頭する。周囲の理解を得られず孤立していくが、孤独の経験は「人は決して独りではない」ことを示したいという動機へと転化していった。若くして死亡する。

 主人公の実の妹。主人公と同様に天使の存在を直接見ることができない。幼少時より主人公と共に都市伝説を蒐集し、文献の整理や記録の取りまとめを担う。主人公の唯一の理解者として機械の試行を支え、主人公の死後は残されたメモをもとに機械を完成させる。主人公の営みを継承することで、物語の結末に至る役割を担う。

キーワード

残響因子

 (ざんきょういんし|Residual Factor)天使がいたという痕跡のことで、主人公が名付けた。都市伝説の中に断片的に残る“手がかり”として扱われる。本作においては、天使を直接見ることができない主人公が、天使の実在に迫るための焦点となる。

機械

 (きかい|the Machine)天使がいたという痕跡「残響因子」を捉えるための機械。主人公及び妹により、他者が検証可能な形となるレベルで残響因子を捉えることができるようになった。後世、伝聞の過程で「天使を喚ぶ機械」とあたかも天使自身を呼び出す装置のように語られる場合もある。

1)
なお、主人公の死に対して後年守護天使による介入の噂が流れたが、守護天使からの公式な言明は無い。