大字五里霧ノ中

Urban Legends: “Angels in the City.” 序章

概要

 「Urban Legends: “Angels in the City.”」は、現代の架空の都市を舞台に、人間社会に密かに溶け込みながら人類を観察・守護する「天使」と人間たちが織りなす都市伝説(物語)群である。天使たちは、単に人間を観察するだけでなく、「世界」と呼ばれる存在によって定められた特別な役割を持ち、人間社会の理性と感情、規律と欲望の間で揺れ動く物語を紡ぎ出している。

基盤楽曲

舞台

「世界」

 「世界」(せかい | the World)は、物語の背後にある超越的存在である。「世界」は自己理解のために、人間とその営みを記録し観察することを望んでおり、その目的のために天使たちを都市へと送り出している。基本的に不干渉の立場を貫き、自らは観照者として静かに出来事を見守っている。

「都市」

 「都市」(とし | the City)は、物語の舞台である。特定の地名を持たないが、現代的であり、技術的にも経済的にも発展した大都市として描かれ、人間の理性と本能、調和と混沌が常に交錯している。特定の人種が突出して多いことはなく、あらゆる人種が平均的に混在している。また、言語の壁は存在せず、皆任意に意思疎通が可能である。
 人間たちは基本的に天使の存在を都市伝説程度にしか認識しておらず、天使たちもまた、自らの正体を人間社会に明かすことなく生活を送っている。しかし、一部の感受性の高い人間は、特定の状況下で天使の存在や活動を感じ取ることがある。そういったことから、人間たちの日常の中に、天使という都市伝説は静かに息づいている。

天使

 この都市伝説群に登場する「天使」(てんし | Angel)は、「世界」から都市へと派遣される特別な存在である。彼らは本質的には精神体であるが、都市での任務に応じて人間の姿を取ることもある。以下にその詳細を示す。

天使の種類

 天使は次の3種類に分類される。

守護天使

 「守護天使」(しゅごてんし | Guardian Angel)は、都市の理性と秩序、調和を保つ使命を与えられている。通常は人間社会に密かに溶け込み、必要に応じて人間や都市に干渉する。性格は真面目で冷静な傾向が強いが、稀に感情が使命を上回る個体も存在する。

解放天使

 「解放天使」(かいほうてんし | Liberation Angel)は、人間の感情、本能、欲望を刺激し、それらを自由に解き放つ役割を担う。守護天使と対照的に多様で自由奔放な性格を持ち、人間が自身の感情や欲望に忠実になるよう促す。守護天使とは対話しつつも競争関係にあり、互いを補完する役割を持つ。

記録天使

 「記録天使」(きろくてんし | Recording Angel)は、都市、人間社会、天使のあらゆる営みを淡々と記録し、「世界」へ報告する役割を持つ。完全に中立的で干渉は一切行わず、あらゆる出来事を客観的に観察・記録する。守護天使および解放天使よりも個体数が多い。

天使の創造と役割の付与

 天使は「世界」によって創造される際、それぞれ以下の要素が定められる。天使はこれらの役割と個性を持って都市へと派遣され、それぞれの使命に取り組むこととなる。

役割の指定

 天使が担う役割は、守護天使、解放天使、記録天使のいずれかである。役割の指定は、「世界」が都市と人間社会のバランスを維持するため、全体を見て均衡がとれるよう行われる。

個性の付与

 守護天使および解放天使には、それぞれ固有の個性や性格がランダムに付与される。守護天使は使命遂行のため、真面目で規律的な性格を中心に比較的均質であるのに対し、解放天使はより自由かつ多様な個性を与えられる。
 記録天使には個性や性格は与えられず、無機質・無個性である。

都市における天使たちの生活

 都市へ派遣された守護天使および解放天使は、通常の人間と区別がつかない姿を選び、人間社会に溶け込んで生活を営む。

肉体の選択

 人間社会での活動に必要なため、天使は自らの個性や好みに合わせて肉体や性別を選択することができる。守護天使はしばしば白色人種(コーカソイド系)で整った外見を持つことが多いが、解放天使の外見は多種多様である。

社会的立場

 天使たちは学生や会社員、フリーランスなど、人間としての社会的立場を与えられ、日常的に人間との交流を行う。守護天使は特に規律を守る立場であるため、人間社会の理性的な側面を体験できる職業を選ぶ傾向が強い。一方、解放天使は人間の自由で多様な感情や欲望に触れられる職業を好むことが多い。
 その社会的立場に立つための必要な情報や手続き1)は「世界」が不自然とならないようなものを用意し、または設定する。

人間との交流と関係

 天使たちは人間との交流を通じて人間社会を深く理解し、自らの使命をより良く遂行するための感性を養っている。ただし、天使は人間と深く個人的な関係を築く際に一定の制限やリスクを伴う場合がある。

「聴聞会」

 守護天使には使命を遂行する厳格なルールがあり、その使命を放棄したり重大な違反を犯した場合、守護天使の共同体では「聴聞会」(ちょうもんかい | The Hearing)と呼ばれる特別な審議が開かれる。

目的と意義

 聴聞会の目的は、使命を放棄したり重大な違反を犯した守護天使に対し弁明の機会を与え、公正かつ厳粛に処遇を決定することである。この制度は「世界」が求める公平性と透明性を反映したものである。

処遇の決定

 聴聞会の処遇には、これまで「消滅」のみが存在していたが、『翼を置く日 』の“事件”以降、純粋な愛情という理由が初めて認められ、「人間として生きる」という新たな選択肢が生まれた。これは守護天使史上初めての例外的な判断であり、守護天使共同体における歴史的転換点となった。

聴聞会の影響

 聴聞会の決定は全ての守護天使及び解放天使に共有され、天使たちが自らの使命や人間との関係性について深く考える契機となる。また、その記録は記録天使により世界に報告され、世界自身が人間や都市への理解を深める要素ともなっている。

都市伝説としての天使の物語

 この都市では、人々の間で天使の存在は「都市伝説」として囁かれている。天使たちの干渉や人間との交流はごく限られた人間にしか認知されておらず、多くの人々にとっては噂や物語に過ぎない。しかし、天使たちの行動が時に強い感情や運命的な事件を引き起こし、それが語り継がれていく中で、「都市伝説」が新たな伝説を生み出していくことになる。

1)
例えば、就職であればエントリーシート及び記載する経歴等。