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翼を置く日 — 第一の例外

概要

 『翼を置く日 — 第一の例外』(つばさをおくひ — だいいちのれいがい | The Day She Laid Down Her Wings — The First Exception)は、『Urban Legends: Angels in the city.』に属する都市伝説の一篇であり、本シリーズの起点となる物語である。守護天使としての使命と人間への愛の狭間で揺れた女性の守護天使が、守護天使史上初めて「人間になる」という選択に至り、守護天使社会における歴史的転換点(“第一の例外”)をもたらした経緯を描く。

基盤楽曲

あらすじ

 都市に派遣された女性の守護天使は、人間社会に溶け込むため大学新卒として一般企業の企画営業職に就き、数歳年上の同僚と「黄金タッグ」と評される関係を築く。だが人事異動で赴任した理不尽な上司の下、心労が募り、守護天使としての活動にも支障が生じ始める。彼女を支え続けたのは同僚であり、解放天使である彼の古い友人は「自分の気持ちに正直に」と同僚の背中を押した。
 やがて彼女は自らが守護天使であることを明かし、同僚は戸惑いながらも受け入れる。支援を得た彼女は次第に回復し、職務にも復帰していくが、長らく抑えてきた同僚の純粋な愛情が解き放たれ、その強い感情エネルギーが都市に波及して人々が守護天使の存在を感知しやすい状態を生む。都市の調和を守るため、守護天使たちは源である同僚の消滅を決定するが、彼女はこれを拒み、明確な使命放棄に踏み切る。
 守護天使社会の『聴聞会』で、二人は各々の真摯な思いを語る。記録天使の報告のもと、守護天使たちは人間理解という使命の観点から熟慮し、史上初めて「消滅」に代わる選択肢として「人間になる」道を認める。彼女は同僚と共に生きることを選び、翼を捨てて人間となる。解放天使の友人は身分を明かさぬまま静かに去り、この出来事は天使たちの歴史的転換点として語り継がれる。

登場人物

主人公

 金髪碧眼、ウェーブのかかったロングヘアを特徴とする女性の守護天使。非常に高い感受性と共感能力を持ち、根底に強い真面目さがある。人間社会では一般企業の企画営業職に従事し、勤勉さと誠実さから社内外で高い評価を受け、「黄金タッグ」と評される同僚とともに成果を上げる。
 一方で、感情や行動すら理論的に捉えがちな堅さを抱えており、理不尽な上司の言動を正面から受け止め続けた結果、心労が増大し守護天使としての活動にも支障を来すようになる。指導役の同僚の継続的な支えにより、次第に堅さが和らぎ、自然な感情表現が可能となるにつれて、仲間の守護天使に自発的に声をかけ相談できる関係も回復した。やがて同僚への愛情を自覚し、使命と愛が衝突する局面で使命放棄に踏み切る。

同僚

 人間の男性で、主人公の指導役を務める数歳年上の企画営業職。繊細で心配りに長け、相手の本音を汲み取る聴く力と、相手目線の論理的な提案力により社内外から信頼を得る。学生時代、周囲の諍いの仲裁に入った末に板挟みとなって双方から距離を置かれ、孤立を経験した過去を持つ。この経験以降、相手の感情の機微を過敏に拾ってしまうがゆえに人との距離感に慎重となり、人間に対する感情を意図的に抑制してきた。
 守護天使である彼女と関わる中で、彼女の前では「感情を抑制しなくてはならない」という思いが自然に薄れていき、長く抑えてきた「人を好きになる」感情が静かに解放される。誠実で継続的な支えを通じて彼女への愛情が純度高く凝縮され、その強い感情が都市全体の感受性を刺激し、結果として人々が守護天使の存在を感じ取りやすくなる“感情エネルギー”の源となる。本人に悪意はなく、むしろ誠実さゆえの副作用である。

同僚の友人

 同僚の古くからの私的な友人として、人間社会に溶け込む解放天使。職業や所属は固定されず、自由な働き方で都市を移動することが多い。人間の「本当に望む方向」へと行動を促す役割から、同僚が逡巡した際には「自分の気持ちに正直に」と助言し、背中を押した。守護天使と同僚が結ばれた後は身分を明かすことなく静かに距離を置き、二人の選択を妨げないよう舞台から退く。